ようやく梅雨も明け、これから夏が一年ぶりに帰ってくるころですね。
十二ヶ月の内もう半分が過ぎ去ってしまったわけでありますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。

我々プロトテアトルは、ありがたいことに、今年の一月末に上演いたしました第四回本公演「ノクターン」が、参加していたウイングカップ５で最優秀賞を受賞するという大変めでたいスタートを切れた上半期でありました。
その後、個々の活動や、大阪の劇団、万博設計さんとの合同団体というかたちで、京都のKAIKAという劇場のgateという企画にも参加しました。
激動、というにはまだまだこれからのところではありますが、団体として一つずつ道に杭を打ち込むことができているような気がしております。

これもひとえに、いつも我々を応援してくださるみなさまのおかげでございます。この場をお借りして改めてお礼申し上げます。

　「ノクターン」が受賞させていただいたことに関してまたここで何か申し上げることは、多少くどいかもしれませんが、あらためて振り返ると、僕自身、その講評会の席にてきちんと、というか緊張と腹痛で上手く言葉を発することができなかったため、改めて少し触れさせていただきます。

「ノクターン」は、プロトテアトルとしては四作品目の一時間越えの公演でしたが、初めて僕が創作した戯曲（２０分ほどのもの）をベースに作ったもので、言わば原点回帰ものでした。
その流れに作品も引き込まれるという形にはなりましたが、上演してみて、僕が作りたい演劇の、原型といってもよいものが作れたと思います。
もし一作品目に「ノクターン」を上演したとしても出来としてはあのような形にはならなかったと思いますので、ベースがあったとしても、あのときあの場所の我々の現在地を形にしたようなものだと考えております。

何を作るにしても、目標というものを持つことは大事だと僕は思っております。
その中で野心を持って挑んだウイングカップ５、様々な団体の公演を見させていただき、自分自身演劇に対する価値観というものが磨かれていくような感覚を得ました。本当に参加することができてよかったです。

しかし、「ノクターン」を終えてみて、自分の力のなさも同時に感じました。
誰もが思うことでしょうが、「自分の思っているものはもっと面白いはずなのに。」「何かが足りない。」と。渇望ですかね。まだプロトテアトルも僕自身も、演劇を作り始めてから約二年、この年数の間で行うことができた公演は、数えられるわけです。本当にわがままな物言いですが、あきらかに経験が足りてないわけです。経験があれば面白いものが作れるというわけでもないでしょうが、そのとき僕は演劇と出会わなかった高校までの人生を少し恨みました。

知らないことがあまりに多く、できることも数えられるぐらい。

じゃあどうするべきか。

僕はおそらく、演劇が好きです。
その全貌も、器の大きさもまだきちんと掴めていませんが、たくさんの人たちと共に作れるあの舞台が好きです。
だからこそ、もっと知りたいし、もっと作りたいと思いました。ならばたくさん作ろうか、しかしただ短編をいくつもやるだけなら、一つにまとめてもいいでしょう。
なら誰も見たことのない、一つの団体による多ジャンルの短編を上演するというのはどうだろうかと。

そんなわけで、今回「フェスティバル」という、同時に何ジャンルもの演劇を見ることができる「短編多ジャンル演劇祭」というものを企画しました。規模こそ小さいかもしれませんが、新しい試み、だと思います。

お祭りと評していることは、本公演よりも劣るとか、そういう意味ではありません。
それぞれ新しい演劇の誕生の瞬間を楽しみ分かち合える冠として掲げました。
いよいよ一ヶ月と少しで「フェスティバル」は始まり、数日の間に幕を下ろします。たくさんの人に目撃していただきたいと思っております。

ぜひみなさま、ご来場いただき、最後までお楽しみくださいませ。お祭りがはじまります。

主宰　FOぺレイラ宏一朗